ONE NIGHT DOPE/エヌジーマ
 
シャンプーが残り少ない。
ヘッドをプッシュしても「プスープスー」と
湿った空気音が閉ざされた浴室内にリバープをかけて虚しくこだますだけだった。
俺はしかたなくいつもの倍以上の時間を費やして
ワックスまみれの泡だたない頭をゴシゴシと掻き毟るかのように洗った。
背の低いプラスチック製のレモン色のイスにまたがり、
身体をまるで外敵から身を守る為に丸く固まったダンゴ虫のように前かがみに丸くなり、強く目をつぶりながらMIC JACK PRODUCTIONのパンチラインを口ずさんだ。
タイル張りの床に弾かれたシャワーのしぶき音が俺の言葉を掻き消す。
決して交わらず平行線を辿る双方の旋律、

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