著しい退化/吉田ぐんじょう
 



美しい風景を見て何か書こうと思った
早速ノートを膝に広げて
削っておいたHBの鉛筆を走らせる

直線を引っ張り曲線を描き
ようやく出来上がったものを見てみたら
そこに広がっていたのは数字だった
何も脈絡もない数字の羅列
87397871231354682103212314564
消しごむで消して書き直したが
何度やっても数字しか書けない

それ以降わたしのノートは全頁
数字で埋め尽くされるようになった
1213215648778829852258164165416

足し算はとても早くなったし
数字もゴシック体のように正確に書けるようになったけれど
なんだかやっぱり満たされない
溜息をついてノートを閉じる
57852134897651352415867563467856
白い花が咲いている
12124547987882828541328719999363


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