俳句る/影山影司
 
背揃えて鳴く蝉鬨の声


 早朝ごそごそと起き出すと、窓の外が黄ばんだ灰色がかっている。まるで精液のようだ。冬の夜明け前は濃密な青が染み渡っているが、夏の朝は淀んだ精液の色だ。ねっとりと体を包み込む油皮脂を感じながら水道水を飲み、もそもそと着替えてサンダルを履く。古びた自転車に乗り込んでトラックしか通らない往来をキィキィ進む。
 夏は、活気と生命に溢れる。この時間帯だけは全ての生き物が半死半生で横たわっているような気分になるのだ。電信柱と電線網は大空を支える事に必死で項垂れているし、アスファルトはじりじり焦がされる昼を思ってうんざりしているのだ。
 そして僕もまた、これから始まる仕事にう
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