消費されるひと/恋月 ぴの
(1)
掛け声と干物の臭いに押し流されるようにして
昼下がりの賑やかさに身を委ねてみる
所狭しと商品の並んだ店先を覗けば
一見かと値踏みする手練の客あしらいに
思わず半歩後ろへ下がりつつ
心細い財布の紐を殊更に締め上げてしまう
それでも
煩わしい孤独感とは無縁の世界がここに在る
その他大勢に紛れる安逸さと
割り箸に串刺したパイナップルの甘酸っぱさ
そしてアメ屋横丁をガード沿いに歩めば
二木の菓子と徳大寺の境内を右手に見やり
やがて春日通りに突き当たる
(2)
小高い丘の美術館にその絵画は展示されていた
芸術としての尊厳を些かも損なう事無く
空調
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