アザマヌクライ/ねなぎ
夜の闇は
匂いもしない
蒸す様な
炎帝の立つ季に
未だ何も思えず
惑ったままで
場所も移り
人も変わり
風さえ吹かぬというのに
未だ
何も思えず
ただ
立ちすくんでいる
限りが見え始める
そんな中で
その微小さに
恐れながら
何も思えず
考えが巡るだけで
人々もいないので
暑さに音が
冴え渡るように
水の中から
水面の屈折を
ぼんやりと眺めるように
蝉の声も
車の音も
全てを溶かして
慣れぬという
鈍さが重く
何を考えれば
良いか
分からず
底で焼かれるように
土の匂いが
している
夜なのに
人が多い
風はまるで無く
何も思わない
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