月をあげる/水島芳野
 
宝箱の蓋はそっと開け放したまま。
そのままなくしても良かった。
あんまりにも鳥籠じみてて、哀れなものだから。

泣いちゃえばいいのに
君はつよがりで
歌を歌ってばかりだったね
言っちゃえばいいのに
僕はつよがりで
言葉をのみこんでばかりだったよ

これ以上不幸を気取り続けるなら
いっそいなくなったほうが世間様のためさ
おわかりでしょう
そんなに賢いあなた様なら、ね。


でも残念ながら
生まれちゃった、僕らは

幸せになってもいいだろ



生きちゃっても

いいだろ。


それだからどうぞ

この手を、
とって。


生きてもいいよ。

君がないものねだりなら
僕が君の月になろう。

生きてていいよ。
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