海辺の理由/
二瀬
君を海辺に捨てにきた
幾度となく試みた
私の指先だけが人になっていて、口が機械的に紡ぐ
動きを受け入れない
貝殻は悲鳴をあげない
そうやって何度も何度も拾い直して
この海辺は
誰も分からないまま
ただの薄汚れた絵画になっていく
君の一瞬が死んだまま
ただ流れとして
この場所はありつづける
私だけが
定義書を持ち続けて
一人、海辺の理由を
考えている
呼吸と同じ
それだけが生きている私の
ひとひらのように
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