起床する朝に/笹子ゆら
 

あさがきたのだ、とおもった

怖くはないはずなのに
黒いマジックで付け足した生命線だとか
あの頃の小さな記憶が赤裸々に飾られて
油性で強くにじんだそれを
わたしはきっと理解できないのだろう

「けだるいんだよ」

不透明だったあのときの空気を
思い出してしまう
きみの言葉がひどく軽くて、冷えているものだから
ふるえてしまっていた


朽ちてゆく世界に溺れてしまいたいなとか
そういう無理な話ばかりをして
きみを向こう側に連れていって
あんな言葉二度と言わせないようにしたかったんだ


起こさないで
カーテンの外には現実しか残っていないよ
日の光を浴びてしまったらきっと
気付いてしまう

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