妊婦のロボ子さん/木屋 亞万
 
表情がない女性だった
人よりも植物に近い
南国よりも北国の植物
針葉樹のような鋭さはなくて
維管束には冷たい水分
いや維管束すらあるかわからない
造花のような表情をしていた

これ生きてる?と子どもが尋ねても
親が答えに迷ってしまような
そんな彼女はいつしかロボ子さんと
呼ばれるようになって
それも子どもがからかい半分で
言い出したような気がするのだけれど

彼女の青白い肌に赤みがさして
少し春を感じられるようになった
私が北海道の桜を思い出したのは
相変わらず表情が凍っていたからだろうか
幸せな気団に包まれているようだった
彼女を涼しげな女性と感じた男ども
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