不眠夜/びわ
 
一定の間隔で
聞こえてくるこれは 悲鳴ではなく
うち上げ花火の音らしい

夜は
みえないものへの思いが強くなっていく

布団の体温がまたわたしを憎んでいる
だえきの甘いにおいが地続きにただよう
夏の浸透圧

河の気配が家々の屋根を舐めて流れ
錯覚の対岸が 静かにゆれている
あみ戸の向こう
わたしは全てのもののはざまで
まんじりともせず
景色だけが遠のきつづける
見えはしない 
かすかな空気の遮断が
わたしにそれを知らせる

夜が停滞して
部屋は濃度をましていく
火の粉が落ちていく 静かな泥の中へ
 
あの花火は何色だろう

戻る   Point(2)