不眠夜/びわ
一定の間隔で
聞こえてくるこれは 悲鳴ではなく
うち上げ花火の音らしい
夜は
みえないものへの思いが強くなっていく
布団の体温がまたわたしを憎んでいる
だえきの甘いにおいが地続きにただよう
夏の浸透圧
河の気配が家々の屋根を舐めて流れ
錯覚の対岸が 静かにゆれている
あみ戸の向こう
わたしは全てのもののはざまで
まんじりともせず
景色だけが遠のきつづける
見えはしない
かすかな空気の遮断が
わたしにそれを知らせる
夜が停滞して
部屋は濃度をましていく
火の粉が落ちていく 静かな泥の中へ
あの花火は何色だろう
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