とらわれびと/佳代子
 

まるで貝のようだ
閉ざされた夏に細波が立っている
親しげに闇は寄り添い
「踊ろう!」と腰を抱く
大海なんて夢見るのはおよしよ
ブルーは誰のものにもならないさ
人形のまま一生を送るのか
生きるためのタリズマン
この性を抱いて何処まで行けばいい
投げ出してしまいたいよ
せめて鬼の神秘性を持っているのなら
遊んでみてもいいが 闇
たぶん何もないだろう
記憶違いであってほしい
遠い過去の出来事に
少しでもバニラの香りがあるのなら
記憶違いであってほしい
扉のない閉ざされたこの夏を
誰か開けてよ
たとえそれが乱暴な手段であってもいい
中途半端な私だから
きっと本能のままに
のびやかに息をするだろう
遠い海を見ながら 
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