地下室の水死体/ホロウ・シカエルボク
楽と呼ばれる類のことはすべて知っていた
ヤクというヤクはすべて
この俺のものだった
女もいた
金に目がくらんだ
見てくれだけの女
穴という穴もすべて
この俺のものだった
吸い込んでぶっ飛んで
薄汚いバーのトイレによろよろと潜り込むとき
日の当たらない世界にだって
天国の扉はあるのだと確信したものさ
たとえそれが
口にするのもおぞましい落書きだらけの
趣味の悪い塗装の剥げた建てつけの悪いドアでもね
何回も俺は空を飛んだ
何回も、何回も何回も
オリンピックのスイマーのように
折れそうな腰を振ってさ
「カミン」って
確かに女は言ったんだ
もう顔も名前も忘れちまっ
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