地下室の水死体/ホロウ・シカエルボク
 


湿気た
非常に湿気た
暗い
地下室の夜に
海底の死体の
くぐもった声が聞こえる
最後に沈んだ船の
偽のいかりに阻まれて
どれだけ腐っても
膨れても
浮上出来ず
深海魚の好奇と
飢えの中で
むやみに白い骨になった


あんた、何が言いたい
ねえ、あんた
話してる言葉がうまく聞こえない
いつまでもそんな場所に
縛られることはないのに
誰もあんたのことなんか知らなかった
誰も
誰もあんたのことなんか知らなかった
死んでから知られてなんになる
死んでから知られてなんになるんだ、魚に食われて
孔だらけになった骸の幻想を抱いて生きることと
どれほど
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