キティのデザインハンカチ/りゅうのあくび
な声で
呼んだような気がして
携帯電話が鳴る
出逢いも突然なことだった
きっと瞬くようにして
消えてゆく恋があるのだろう
彼女は一回逢うごとの
お小遣いとして
随分の金額を求めていた
詩集を出すのに
お金が要るから払えないと
伝えていたはずなのに
労働による駄賃ではなく
その白い身体を売ることによって
得られる贅沢というものが
あるとしたら一体
彼女はすれ違うたびの男へ
どんな作り笑いを
振りまかなければ
ならないのだろうか
微笑の
夢を見ている
手渡されることのない
キティのハンカチは
まるで恋の最終幕が閉じられる
カーテンベールみたいにして
哀しく小さな空のレールの下に
静かにひかれていた
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