ミ ミ /吉田ぐんじょう
 

そのうちミミは痩せて目ばかり大きい
お母さんにそっくりの女の子に育ちました
ミミの服はいつもたばこくさいのです
それはお母さんがたばこを吸うからです
そのお母さんは春の終わりに
刃物を握ったまま浴室に入り
水の満たされた浴槽で眠っております

あんまり起きないので とうみん かもしれない
でも今は夏なので とうみん ではなくて
なつみん というものなのかもしれない

ミミは水道水を飲んでちょっと膨れて
おなかがすいたと手を見つめました
でも 指は
全部たべてしまってもう無いのです

仕方がないので
痩せた足で飛び跳ねて遊んでいます
あんまり体が軽すぎるので
飛び跳ねることを覚えたのです

何も教わらないのに
飛び跳ねることと食べることだけは
自然に覚えたミミでした

おなかがちゃぷんちゃぷん
音を立てて

半透明な光が射し込んでいます

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