空気、風、温度/吉原 麻
空っぽになったビールの空き缶を潰しながら
シャワーを浴びようと立ち上がる
夏の夕方は明るくて
少しの背徳感を纏いながら
生ぬるい風をベランダからおくってくる
キュウリとトマトだけのサラダを
いつものシンプルなドレッシングで食べたら
それだけでいろんなところが満たされる
君と一緒にいるからなんだよ
Tシャツに滲んだ汗と
開けっ放しのリビングのドアで
7月を思うと
君と初めて出会ったころを思い出した
夜の幕張を迷子になりながら散歩したり
行き当たりばったりで大阪や奈良に行ってみたり
阿佐ヶ谷で日本酒で潰れたり
けれども思い出っていうのはどこか嘘くさくて
頭の中には残っているけど
手で掴めないもどかしさや痛みがある
今この瞬間に
私のうしろで煙草に火を点ける君は
確かにそこにいるので
抱きしめられるんだ
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