電気洗濯機(昭和の時代−戦後)/青い風
 
最初に電気洗濯機を見た時
それは白い桶のようなもので
真ん中から棒が突き出ており
それがゴオンゴオンと右に左に
反転していた

僕はとても それが洗濯機とは思えなかった
今でもそれは洗濯機ではなかったように思う
強いて言えば芋漕ぎ機であった


僕の家に洗濯機が来た頃
もうずいぶんと洗濯機のイメージは
頭の中に定着していて違和感はなかった
僕たちは代わる代わるに
洗濯機の中を覗き込み
飽くことなく水流の渦巻きを眺めた
また その中に船を浮かべようとして
叱られたものだった

しかし この洗濯機は
風呂場の隅や軒下に置かれ
やがて僕らの意識の中から
薄れていった

それとともに たらいと洗濯板による
青空の下で繰り広げられた
さあやるぞっていう母親の
一大ページェントはなくなり
家事は面倒くさいもの
余分なものに変わっていった


その頃から
お金を稼ぐための仕事と
毎日の生活とが
バラバラになっていったように思う
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