夏の変なこと或いは、幽霊の始まり/吉田ぐんじょう
トにあった
ゲームセンターのメダルを投げてみたら
みんな わわわわ
とそっちへ行ったけれど
すぐ戻ってきて
お金じゃなかった
としょんぼりしている
お金だよ
と騙してその場を切り抜けたが
そのあと自動販売機でジュースを買おうとしたら
財布の中の硬貨がすべて
ゲームセンターのメダルに変わっていた
・
電車に乗るために切符を買おうとする
けれども
買えない
ゲームセンターのメダルは
投入口から何度入れても
ちゃこんちゃこんと戻ってきてしまう
そうしているうちに夜が更けて
どこへ行きたいのか忘れてしまった
生暖かいメダルをいじりながら
少し笑う
行き場を失ってしまったわたしは
その場でゆっくり消えてゆく
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