花と戸棚と着信音/吉田ぐんじょう
屈だったけどちゃんと収まった
入っていた食器やスプンやフォウクを
全部床に落としたら
豪華な音がして 目の前が眩んだ
・
ちぢかまって静かに息をし
瞼を下ろすと宇宙が広がる
☆の形をした薄っぺらい星が
瞼と眼球の間に貼りついて
アルミホイルのようにしらしらとそよぐ
こうして見る限りでは
天国も宇宙も案外狭いもののようである
・
いつの間にか眠ってしまって
外は丸っきりの闇である
握っていた掌を開いたら
白い花が零れ落ちた
なぜだろう
立ち上がろうとしても
花びらばっかり散って
うるさくて仕方がない
・
遠くで携帯電話の着信音がして
いいや
それともあれは
わたしの笑い声だったろうか
・
なまぬるい闇
笑った口が裂けて落ち
暗闇の中で三日月となる
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