テレビ(昭和の時代−戦後)/青い風
 
テレビが床の間に飾られていた頃

人々は正座をして見たものだった
テレビは財産であり家の誇りであり
神様だった

神の前に集うがごとく祈るがごとく
近所の人々はつめかけ
小さな画面の中のスターたちを眺め
一喜一憂したものだった


 その頃たしかに
 神様と私たちの間には
 大きな隔たりがあった



テレビが茶の間にすえられた頃

テレビを見ながら食事をするようになった
テレビを見つめながら話をするようになった

家族は自分に必要なことしか喋らなくなった
そう モグラ叩きのモグラのように
必要な時しか姿を現さなくなった


 その頃から
 我々は孤独な
 神様になったのだ
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