シンナーかけられた思い出がひとつ/青木龍一郎
あっけないものだ。
僕の思い出は何者かに書き換えられてしまった。
高校に入って、加賀さんを見なくなって
何だか、彼女、死んだんじゃないかなんて、そんな気がしてたんだけど
この間、HMVで見かけた。
高校の制服を着て、視聴機でYUIの新曲を視聴してた。
僕は店の隅からその光景を眺めていた。
加賀さんが店を出た後、僕はYUIのCD売り場に行き、好きでもないのにその新曲を買った。
家に帰って、プレイヤーに入れて再生すると
スピーカーから加賀さんの声で
「心の瞳で君を見つめれば」
と聞こえてきた。
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