向日葵/松本 卓也
ふとホテルの窓を開けて
景色を眺めてみたくなった
泊まり慣れたビジネスホテル
四缶目の酒を呷りつつ
少し薄くなった頭髪を気にする
まだ大丈夫だとは思うけど
目的も夢も自分自身でさえ
あやふやな暮らしが過ぎていく
今までのように身の上を嘆くことも
単に我儘な駄々でしかないと気づいたから
新大阪駅の高架下を潜りながら
他人と目を合わせないようにすり抜ける
一週間の出張は長いようで短い
もう半年後には三十になるのだ
パチンコ屋の店先に咲き乱れる
向日葵の花びらに指を伸ばす
それはただの造花だけれども
幼い頃その姿を真似ながら
両手を広げていた自分の姿を
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