「ゆれる (教室に咲いた花)」/ベンジャミン
春にまいた種が
いつのまにかもう
つぼみをつけていたことに
気づいていなかった
「先生と会えるのは今日が最後なんだよ」と
ひとりの生徒が言ってきた
本当は
知っていた
けれど知らないふりをした
春から夏に季節が移るように
流れてゆく何かを止めるほどの
僕はそんな立派な言葉を知らない
「受験、頑張れよ」って
なんてありきたりなセリフだろう
本当は
ずっと考えていた
その生徒がいなくなると知ってから
その生徒に僕はどれだけのことを
その生徒に僕は何ができたかを
※
春にまいた種が
つぼみをつけていた
それはとても自然な営みだ
もうじき咲く
そう信じるしかない
生徒の後姿が
だんだんと遠ざかる
教室の窓辺には
きっともうじき咲く花が
風もないのにゆれている
ゆれている
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