黒いワンボックス/遊佐
 


貴方の、
あの黒いワンボックスは
今頃、何処を走っているのだろうか?

錆びたワイパーが、
くすんだフロントグラスを磨き、
ひび割れた塗料が、
何となく良い感じに模様を描いてた

それは、
貴方の笑顔と重なって、
私の空想の地図を塗り潰して行く

歪み、割けて、
雨漏りのする屋根と、
風が通り抜けて行く、しまりの悪い窓と、

ただ一つだけ、
新品の、
しっかり者のナビの絶妙なアンバランスは、

貴方のそれに似て。


夢がね、
夢を越えて行く、
夢を突き抜けて行く。

━貴方の中に、
私は夢を見る━


青空の下で、
ポンコツを蹴飛ばして、
でも最後迄諦めない姿や、
大雨の中、
泣きながら
相棒を修理する貴方の、
笑顔と涙が浮かぶ。


今も、きっと貴方は、
あの黒のワンボックスに抱かれるように

走り続けて、
眠りに就いて、

夢見るのでしょう
世界の果ての、

その先を。



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