タンゴ・ダンサー/渡 ひろこ
酔うように
虚空を何度も何度も斬っていく
象牙のような2本の曲線が絡まり
互いを追いかけて見えない階段をあがる
それは…
空回りしている私の足でもあった
地に着かず気持だけが走り
排水溝に流される日常
おぼろげな予感だけにぶら下がり
力なく浮いたままの足
張りつめたホール
鋭角に響きわたる和音の洪水の中
気迫の波動を前に
ダラリと萎えた足を
隠すすべもなく
ただ ただ 息を呑むと
昇りつめていく
赤いつまさきが跳ねて
ひろがる熱い波紋が
ふぬけた空回りを
スパッと斬り落としていった
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