赤い、朝に/結城 森士
『赤い朝』
おはよう。
それは夕日に言ったのだろうか
カーテンの外の赤い朝はためらいがちに
おやすみも言わず、暮れていく
そして夜が来る
おはよう。
また明日も
言うのだろうか
次第に、蒼ざめていく
赤い朝に。
『生活』
鳥は、飛べなくても
鳥なのかな
って、
あなたは言って、泣いた
黒いシルエットが
鳥かごの中で、笑っている
『ピアノの流れる、階段』
マンションの8階から見下ろす街は
焦点が、少しずつずれていくように
ぼんやりと、鈍感
昼間だと言うのに、
厚い雲が感覚の全てを塞いでしまったみたいに
気だるく、
だるく、
るく、
るく、
るく。
優しい、めまい。嬉しい、めまい。悲しい。
ピアノの音が止まった
私は階段を駆け下りていった
湿度の高い、バニラの匂いがした
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