分娩台のシュプレヒコール/板谷みきょう
大切だったと
気付いたりするのは
随分と
経ってからのことが
多い
あの感触は
不快でしかなかったりして
そんな風に
思えてたことに気付いたのが
昨日のこと
生暖かいそのぬめりを
欲していたのに
どうしてたんだろうか
例えば
海鳴りだ
季節外れの
浜辺だったりするのに
鼓動に
潮騒を聞いたことがない
身を焦がす想いも
それなりに
諦めてしまい
抗うことさえも
忘れていた
封印させた半分だけの月
その全てが
あの
秘密のアパートで
荒い息遣いを重ねたのだ
公安にマークされてるとも知らずに
随分と
無茶をし
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)