メイク落としシート/小原あき
 
満たされずに
心の中で泣いているのだろう
わたしはあえて今日は参戦せず
彼らの応援歌を
こうやって残業してまで
パソコンに書きつづっている
会社には誰もいない
応援歌を書くには
鎧を脱がなければならないので
メイク落としシートでこっそり脱いだ
ゴミ箱に捨てようとして
わたしはそれを鞄にしまった
泣いている鎧を
そのまま捨てることは
どうしてもできなかった


土曜日
昨夜遅くまで
家に帰ってきてからも
わたしは何かに取り憑かれたように
応援歌を書き続けた
それはもはや
同僚へではなく
ましてや世の中の働く人へでもなく
わたしへでもなく
誰へ贈るた
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