「流線型」/ベンジャミン
知っている
野生の生き物たちが
自らの意思で立ち上がれなければ
どうなってしまうのかを
ふるえる膝を押さえながら
重たい身体を支えようとするとき
昔見た象の瞳を思い出した
陸上でもっとも大きく
たくましい脚を地面にのばしながら
その巨大な身体には不釣合いなほどのつぶらな眼は
深い色を沈めて横たわっていた
ほそめた眼で夜空を見上げるとき
瞳をおおう透明な膜をすかして映る星のあかりは
広くにじんで幾重にもその中心をくるんでいる
あれはそう
遠く彼方に忘れてしまいそうな
故郷の草原を浮かべていたのだろうか
風になびく褐色の草木
焼かれるような陽射し
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