うたぐりよせる/黒川排除 (oldsoup)
蜃気楼の港に棲む体毛薄き猿
鍬を捨てる恥じらうほど山が近い
水面に枝吸う葉また葉の降る音
遠方のドアノックするシャボン玉
花の籠実は籠売る籠売りも籠
造天の深みに澱む書の類
陸の端釘で留めひとの形の紙
銀紙にうつしつつみつつつみ捨てる
風穴を貫く橋撓みすぎて円
複製された山の方から遠い山鳴り
密室の明るさに輪郭がない
うつ伏せに鳴る亀春の軋む岩陰
群れで来て渦中に片足ずつ五本
密室あく閉じた街に地の底から塔
蛙の白い舌が頬を抜け触ると濡れていた
地球儀常軌を逸し始め児童ら旋回す
大豆と化し川に降る剥き出しの若さ
両手を挙げなおも細り線だ星の夜
泥塗って証す桟橋より遠し
夜空研がれてしまうビー玉潰れてしまう
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