たべもの(草稿)/れつら
喉につまらせぬように息を食道に落とし込む
どこへでも行けるし
何だってできるのだろうが
山をふたつ同時にのぼることはできない
目の前の女はカレーライスを頼んだ
青白く光る米粒と
赤黒く滾るこぼれ落ちそうなルウを
それでもすこし分けようとするが分かれ目で切り取ることができずに
スプーンの上にちいさなカレーライスを作って
口に放り込んだ
ひとくち含むたびに欠けたたべものは膨らんでしまって
この調子ではいつまでも食べ終われない
女は涙ぐんでいる
辛いのだろう
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