抛(ほう)/clef
 
掬(すく)い取れぬもの
沸きたち噴きだす火口に押しこめようと
小さな突起ごとわしづかみに掴(つか)んでは
肥大してゆくこころ
そっくりそのまま、ひとのところへ返そうとする

無数に降り立つあなたの
たぶん、額の
きっと、その熱が
( そうなの、)
たぶん、いくつもの瞳に映っていたから
間隙を見つけられなくて
返せないまま逃げ戻ってきた

そんな朝に吃音の挨拶から始めようとして
なかれとかべからずとか
頷きにくい言葉から先に往来するので
脚の付け根に云わぬ花が咲く


飛び立ちそうな火口の麓
ぎゅっと押さえつけている手が 今もある
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