クリームシーツミルク/木屋 亞万
 
シーツの滑りが良すぎて
窓辺に頭を預けられない
身体に力が入らない
部屋は底から白んでいく

ペンキのはげたベランダから
甘いクリームが弾けていく
ただの牛乳だったので
私は
生クリームには
なれませんでした

あんなに好きだった人に
体温があることを知った
私とは種類が違うようだ
あの人は涼しい顔をして
温もりを秘めているのだ
温かい手は温かいので
クッキー作りには向かない

私が好きなのは白くて
冷たいカーテンだった
風に膨らんでは萎んで
私の頭を巻き込んでいく
カーテンが昼寝している間に
私の小さな一生は二回散った

苦しみが滲んで
夢は脂肪が足りなくて
生クリームには
なれなかった
泡立ちミルクに膜
マグカップを塞いで
私はまた覚めていく

シーツは滑りが良すぎて
身体を支えてもらえずに
頭はベッドに倒れた
枕には水滴が落ちて
カーテンは変わらずに
風は止まらず
私はずっと私のまま
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