冬と道/木立 悟
鳥の声 泡の音
鳥の声 泡の音
水のなかで
鳴いているのか
目をつむり
そこに居るものに会う
半分にし 半分を使い
残り半分が雨になる
わからないものを捨てられず
すぐそばにただ置いている
ひとつの町の名が
すべての雨の名のようにまたたく
鏡を知らない生きものが
鏡の実る樹の陰にいる
雪の原に赤い光が
落ちつづけては消えてゆく
光は人を見るだろう
氷が溶けてしまうまでの
ほんのわずかなあいだだけ
人は虹を見るだろう
すべてが揺れ動いていたためか
風が消えたことに気づかずにいた
風と同じかたちの膜が
夜を鈍く覆っていた
雨すぎる雨 すぎる雨
まばゆいひとりの盗人の唄
汚れた爪を血で洗うのは
常に名もない指たちだった
失われた譜と奏者の夜
ところどころ割れた器の
わずかな響きを呑み干して
光はゆうるりと道をまたぐ
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