都市伝説/吉田ぐんじょう
覚えはないのに
男だ と思う
この家に住んでいるのは
透明な男だ
「隙間女」
隙間に現れる妖怪。
目が合うと、異次元に吸い込まれ二度と戻れなくなる。
「かくれんぼしよう」と言われ、見つかったら異次元へ連れて行かれる。
麦藁帽子をかむって
夏の真昼間に外出すると
塀と塀の隙間に女のようなものがいて
こんにちは と挨拶すると飴をくれた
薄荷の味がする緑の飴だった
女のようなものはしゃべらない
ただいつもにこにこしているだけである
優しいのでわたしは好きだったんだけど
誰に言っても
そんなものは見えない
と否定されるばかりで
ある日
女のようなものをそこから出してあげようとして
掴んで引っ張った
わずかに苦しそうにした女のようなものを
全体重をかけて引っ張りだしたら
途中でびちんと千切れてしまった
あわわ
とびっくりして手を離すと
ぼとりと路上に何か落ちた
それは可愛い薄紅の花を咲かせた
ペパーミントの茎であった
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