ホームレス/青い風
駅まで送ってくれないか
何処へ行くの
いつ帰ってくるの
もう帰ってこないんじゃないの
そんなことないよって言えなかった
八月の明るさがやけに眩しくて
私は瞼をしばたいた
妻は運転しながら泣いていた
二人は駅に着くまで
なんのきっかけも見出せないまま
私はこうしてホームを去った
車窓に流れる見慣れた風景
私は 自分の世界から
見知らぬ世界へと運ばれていく
苦しみと悲しみの中で
瞼が重い
瞼の中のたくさんの思い出
その重さに耐えかねて
私は瞼をしばたいた
もどるなら今だ
しかし 私には立ち上がる
その力がなかった
私はこうして自分の世界を失った
何故って聞かれたら
なんて答えよう
あの事がそうで この事もそうで
しかし あの事もこの事も
そうでないような気がする
私は正直に生きられなかった
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