「コインロッカー」/ベンジャミン
 
何か大切なものを
過去に忘れてきてしまった
そんな気がする

握りしめた手の中には
小さな鍵がひとつ

それが何の鍵なのか
それも思い出せない

わからないまま街を歩いた
見覚えのある景色
だけど生きている実感がない

握りしめた手の中には
小さな鍵がひとつ

すいこまれるように
近くの駅のコインロッカーの前

期限切れが近づいている
一番すみっこのそれに
小さな鍵を差し込んだ

カチャリと古びた金属音
ギギギと鈍く開く音

中には一枚の紙切れが入っていて
たった一言

「今」と書かれていた
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