交差点、遠い空/霜天
 
鳴り止まない犬吠埼
海の声を聞いているのは少女、麦藁帽子
岩に砕ける波の飛沫を数えながら
降りていくのは
坂道

道はいつまでも道で
道は今までも道だった
通り過ぎる国道409号線
海を渡って繋いでいるんだって
夜と朝とすべての人と


端の見えない直線道路
駆けていくのは少年、自転車
通りすがりの人、風、空
真っ直ぐ続くすべてのものは
直線道路をいつまでも
路線バスが超えていく

曲がりくねってみたり
交わってみたり
遠くを望みながら少しの
記憶に引っかかった夢を
目覚めの中で探しながら
路線バスの揺れの中
求めている眺めている
夜に朝にすべての景色に

交差点、遠い空
見送る人と行く人と
赤錆びたナンバープレートは
行き先を告げることもなく
音をごとごとと路線バス
張り出した信号に右へ左へ
振り分けられて振り分けられて


麦藁帽子と少女と自転車と少年と
遠くどこかで出会うだろうと
海を渡って繋がっている
飛び散る飛沫はこの道の上
交差点、遠い空
右へ左へ真っ直ぐへ
行き先は誰にもわからないまま
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