僕は金魚になって六畳の水槽の底に転がる/マッドビースト
帰ると 金魚が死んでいた
台所の床に置いた水槽の中で
腹を水面に浮かべて
血の止まった体は色あせて
生きていたころの鮮やかな赤ではなかった
死骸から染み出した白い粘液で水は濁り
剥がれた鱗が浮かんでいた
まだ名前も付けてなかったお前
どうして死んでしまったの?
僕は悲しむより先に
水はまだきれいだったとか
エサはちゃんとやったとか
自分が悪くない理由を探していた
そんな自分を消したいと
毛布に包まって眠った
眠ろうと転がった
もう水の跳ねる音は聞こえない
部屋には
締め切ったカーテンの青が
満ちていた
泳ぐもののない水槽の中から
ポンプの音だけが規則正しく部屋に響いた
お前もひとりだったんだね
水の中でお前は泣いていたのかな
水の満たされていない六畳の水槽の中で流れる涙は
はっきりと分かった
戻る 編 削 Point(2)