天球儀/悠詩
檻の中に生まれた
という罪を
優しくこね回す
拵えられた天体望遠鏡は
冷たく震えている
あの日 靴を置き忘れた星を
探している
星は望遠鏡を覗かない
目を瞑ったまま光るだけ
ト書きの囁き
「星たちの優しいそれはノギスである」
ノギスで試したわたしの濃度は
掬い取れますか
救い取れますか
はみ出た右足を切り取ると
空の童話に収まりますか
エーテルを食い尽くす童話の
貪欲な触手は
わたしをすり抜けていく
檻の中に育った
という罪を
優しくこね回す
拵えられた階段は
天井に溶け落ちる
とても痛そうに
天井に溶け落ちる
檻の中の操られ人形に
星は目もくれない
深い深い宇宙の底で
もう呼吸が続きません
早く壊れてください
わたしの天球儀
大朗読にて
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