川と姫/木立 悟
 





うなじの寒さ
ひとつはばたき
去るものひとつ
来るものは無く


風が
糸のようにわずらわしい
抄い 抄いつづけても
言葉は砕け 言葉は消える


さまよい とまどい
気づかぬうちに
背中のほつれは結ばれている
忘れられた色の挨拶


くちびる かんむり
中洲に降る雨
波に映る姫
窓のぼる羽


点いては滅くなり
夜をころがり
衣は草色
水の内も外も飛び


まぶたと 舌の先から匂いは落ちて
雨を数える声になる
蛇 そこにいますか
私を 見ていますか


地と空のちぎり絵に
加わりつづける新たな色
そこにはない水の水音に
手のひらは沈む 手のひらはうたう




















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