川と姫/木立 悟
うなじの寒さ
ひとつはばたき
去るものひとつ
来るものは無く
風が
糸のようにわずらわしい
抄い 抄いつづけても
言葉は砕け 言葉は消える
さまよい とまどい
気づかぬうちに
背中のほつれは結ばれている
忘れられた色の挨拶
くちびる かんむり
中洲に降る雨
波に映る姫
窓のぼる羽
点いては滅くなり
夜をころがり
衣は草色
水の内も外も飛び
まぶたと 舌の先から匂いは落ちて
雨を数える声になる
蛇 そこにいますか
私を 見ていますか
地と空のちぎり絵に
加わりつづける新たな色
そこにはない水の水音に
手のひらは沈む 手のひらはうたう
戻る 編 削 Point(3)