なつかしい猫/石瀬琳々
 
なつかしい猫
いつか啼いていた気がする
私だけの思いが影を引いて
路地を今曲がってゆく


そんなに淋しい瞳で
私を見つめないで
やさしく撫でてあげたくなる


さしのべた指先をすり抜ける風
振り返ればもう影はない
道端の花がかすかに揺れて


なつかしい猫
いつかどこかで
そっと呼ばれた気がする
ずっと呼んでいた気がする


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