こころのなかで、きる/結城 森士
「私は戦地で負傷者を救命する医者だった。
ある日、重症の少年が母親に連れられて
私の元へ駆け込んできた。
しかし私は、少年を一目見て
彼は助からない、と悟った。
酸素ボンベをつけて延命処置をとったとして、
生きながらえてもせいぜい10分かそこらだ。
一人の少年の命を10分延命するために、
貴重な酸素ボンベを使ってしまうのか。
この後に駆け込んでくるであろう数人の命を救うかもしれない酸素ボンベを
ここで使い果たしてしまっていいのか。
それとも、
この少年を見殺しにしてでも
酸素ボンベは残しておいた方が良いのではないだろうか。
結局、私はどうした
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