「満たされたいと思うとき」/ベンジャミン
 
ノートに書いた文字が
はしから消えてゆくのと
あなたは不思議そうに
ペンを見つめていました

言葉がかわいそうだから
もうこれ以上は言わないのと
あなたはすっかり黙って
消えた文字を追いかけるように
視線を漂わせていました

梅雨ですから
毎日の天気は不安定で
突然降りだした雨に流されて
あなたの文字も消えたのでしょう

あなたは小さくうなずいて
白紙のノートをめくりました

うっすらと
消えていった文字の影が見えます

淋しさ

そこだけが
何故かはっきり読めました

そうですね
淋しさはどこにでもあるくせに
何も満たしてはくれませんから

そう言うと

あなたは小さくうなずいて
何か呟いたようでしたが

また降りだした雨に
それも淋しく流されてゆきました
   
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