夜と冬/木立 悟
 




原野の指
水と稲妻のあいだの子
空になる 花になる
うたにも うた以上にもなる


鉄の筒を風が通る
鉄の籠を轍が揺する
予兆の上の光が吹かれ
石の路地に鳥となる


野と道の途切れるところ
海へつづく荒地から
ひとつのうたの生きものが
ひとつの橋をすぎてゆく


狩りの手をすり抜け
燃される色
沢を沢へ曲がる沢には
次の春まで知られぬ死がある


動く滴
招くかたち
うつらうつらと燃える火の
音を囲む音の踊り


街をめぐる原と川
凍りかけて 道は遅く
高低が散らす輪 くゆる熱
つばさあるものすべてのはじまり


橋にもたれ
眠りつづける子の背と指に
川の両側の街並が
炎のようにはばたいてゆく















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