コイン/ゾウさんのこと/石畑由紀子
 
り、この街のよいところを色々と彼らに案内してまわった。あるときは覚えたての日本語……ひらがなで書かれた看板を、車内からみつけては子どものように大声で読み上げていったことがある。よつば、てんぷら、おおつか。貪欲がゆえの高揚感はしだいに可笑しさへと変わり、気づけば私たちは狭い車中でゲラゲラと声を上げて笑いころげていた。母国語の違う私たちがひとつのことで笑いあう、ひととき。

約半年の滞在期間を終え、彼の帰国が近づいたころ、街で行われた国際交流フェスティバルの会場で私を迎えてくれた彼はミャンマーの民族衣装をまとっていた。ロビーに飾られた国旗の前に端正なおももちで立ち、私はそれを写真に収めた。晴天のな
[次のページ]
戻る   Point(8)