コイン/ゾウさんのこと/石畑由紀子
 
十年前、通っていた英会話学校のパーティで彼は気さくに声をかけてきた。とあるミャンマー人との出会いであった。三十代半ば、日本人よりもやや健康的に焼けた肌をし、そのぶん白い歯が印象に残るその紳士は、人懐っこくよく話し、よく笑い、社交的でつねにムードメーカーであった。クセのあるアクセントではあったが淀みなく英語を話すさまをみて、きっと教養のあるひとなのだな、と感じつつ、ときおり単語が浮かばず天井を向きがちな私の会話ペースを気づかってくれることが嬉しくもあった。そのパーティですっかり意気投合した私たちは、その後も連絡をとりあっては互いの友人とともに会い、休日にランチをしたり郊外の観光地へとドライブしたり、
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