夜野指/木立 悟
 


雲の傷を見つめ
花の傷を見つめ
夜の風に会う
川と光
野をさする指



草に埋もれた門のまわりを
月の光が
何度も何度も踊り巡り
いつまでもいつまでもやめないので
誰もが数えることをあきらめ
ただ黙ってながめている



すっと延びた流れのそばを
濡れた素足で歩むひと
川にそそぐ光の雨をお手玉に
空へ空へ
微笑みとともに返すひと



光の魚
手にあふれ
手にあふれ
道にはねては
消えてゆく



光こぼれるお手玉の手に
どこからか子らがやって来ては触れ
見て見て緑だよ緑だよと言いながら
笑い声と足音を残し
去ってゆく



茎を静かになぞる指
光の踊りを数える指
源へ源へ糸つむぐ指
川をわたる素足のひとの
緑の手のひらにさざめいている




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