ホムンクルスの大きな手/こんぺき13ごう
 

 別れぎわに振ったときも軽い手
 その指さきから飛散する言葉の感じ/トン・コープマンの音に近いかもしれない

 差しのべた手が届かなかった空虚

 灰色の猫をかまうときの手の感触/そして引っ掻かれたときのひきつる痛み

 音もなく指さきからほどけてゆく夜の甘さ
 彼が夢をかたるときの手振りの可笑しさ
 差しのべられた手を握ったときの恥ずかしさ

 ホムンクルスの大きな手


 ―――


 アートマンとブラフマンが両手を取って
 くるくるとまわってまわって消えるみたいな

 まるで焼け落ちそうな殺意だった


―――


 この手を
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