レスポンス、/れつら
 


 もう言うべきことなんてさ別になにもないよなあ、彼はジョッキを傾けながら自嘲気味に呟く。真昼、商店街の擦れたバーではテレビから野球のデイゲームを垂れ流していて、棒に球が中るか中らぬかでその店はなんとはなしに浮いては沈みを繰り返していた。そして彼らの信心深さも甲子園球場で奮戦する男たちには届くはずもなく、643のゲッツーに倒れたバッターの駆けたあと、砂埃のように溜息が立ち昇り、その生ぬるい風は一杯のビールを空にして、ついでに僕にとっての言うべきこと、も、ついでに掻き消していくのだった。蝋燭をひとつ吹き消すように。




#reflection


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ただ
やすら
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